- 1. GPL における「特許」の基本原則
- 2. GPL v2 と特許:特許の扱いは「未定義」
- 2-1. GPL v2 の立場(条文上の結論)
- 2-2. 開発者が特許を保持したまま GPL v2 ソフトを配布可能
- 2-3. ただし例外がある(重要)
- 3. GPL v3 と特許:特許ライセンスの明文化
- 3-1. 自動特許ライセンスが付与される
- 3-2. 特許行使に制限が課される
- 4. 「GPL v2 or later」を選ぶと特許戦略が崩れる理由
- 4-1. ユーザーが GPL v3 を選択できてしまう
- 4-2. “v3 の特許条項が後から勝手に適用される” というリスク
- 5. GPL v2 固定を選ぶと特許戦略はどう確立できるか5-1. 特許の排他権を保持したまま OSS 配布が可能
- 5-2. 無料版(GPL)と有料版(商用)の切り分けが容易
- 5-3. 競合が GPL の範囲内で利用する場合の特許行使例
- 6. まとめ:特許を活用するなら GPL v2 固定一択
- 7. 参考情報
- 1. GPL v2 本文(FSF公式原文)
- 2. GPL v3 本文(FSF公式原文)
- 3. FSF公式「GPLv2 の特許に関する立場の説明」
- 4. FSF公式「GPLv3 の特許条項の狙い」
- 5. Linux カーネルプロジェクトによる GPL v2 特許解釈(一次資料)
- 6. FSF公式:GPLv2 → GPLv3 の「or later」の意味
- 7. 特許権の性質(排他権)の原典(法律)
- ■ 記事の主張ごとに対応する一次情報マッピング
※私は法律の専門家ではありません。ここでは、個人的な調査結果および見解を述べています。参考情報に留めて、実際に重要な判断をする場合は、必ず詳細を調査してください。
GPL v2 を採用する場合、特許をどこまで活用できるのか
WordPress や OSS の世界では「GPL v2 or later」が一般的だが、特許を取得している開発者にとっては、この選択が特許戦略に重大な影響を及ぼす。
本記事では、GPL v2 と GPL v3 の特許条項の違いを正確に整理し、
特に “GPL v2 を選んだ場合、特許をどう扱えるのか” に焦点を絞って解説する。
1. GPL における「特許」の基本原則
特許は、
- 他者の実施を排除できる(差止・損害賠償)
- 企業向けにライセンス提供が可能
という点で、著作権とは別の独立した権利体系である。
GPL はソフトウェアの著作権ライセンスであり、特許権の処分(許諾・不許諾)は GPL が直接強制できる領域ではない。
2. GPL v2 と特許:特許の扱いは「未定義」
2-1. GPL v2 の立場(条文上の結論)
GPL v2 は特許について
- 「黙示の特許ライセンス」を明記しない
- 特許権を開放する義務を課さない
- 特許行使を禁止しない
- 特許ライセンス条件を GPL に自動組み込みしない
という特徴がある。
つまり、
GPL v2 は、特許について “ほぼ何も規定しない” ライセンスである。
2-2. 開発者が特許を保持したまま GPL v2 ソフトを配布可能
GPL v2 では、開発者は
- 特許を保持したまま
- 特許を別途ライセンスしたり
- 特許行使の余地を残したまま
GPL ソフトを配布できる。
法的には矛盾しない。
2-3. ただし例外がある(重要)
特許条項はないが、GPL v2 の Section 7 が制限として働く。
自身の特許ライセンス条件が GPL の条件と両立しない場合はソフトを配布できない。
つまり、
- GPL v2 ソフトを配布する者が
- 特許の使用に追加条件を課す場合
その条件が GPL の自由と矛盾すれば、配布そのものが不可能となる。
※これは「開発者の特許行使を禁止する」とは意味が異なる。
配布時点で矛盾を作るな、というだけである。
3. GPL v3 と特許:特許ライセンスの明文化
GPL v3 は特許について、v2 と比較して明確な「自動ライセンス条項」を持つ。
3-1. 自動特許ライセンスが付与される
GPL v3 では、
ソースコードを配布した時点で、受領者に対して
そのソフトの特許を実施するために必要な範囲の特許ライセンスが自動的に付与される
という明確な仕組みがある。
3-2. 特許行使に制限が課される
GPL v3 は
- 特許を使って受領者を訴える行為
- 下流利用者の特許実施を制限する行為
を禁止する。
結果として、GPL v3 を選ぶと 特許ビジネス上の自由度は大きく制約される。
4. 「GPL v2 or later」を選ぶと特許戦略が崩れる理由
4-1. ユーザーが GPL v3 を選択できてしまう
「or later」の場合、受領者は GPL v3 を選んで利用できる。
すると、
あなたが GPL v2 を想定して配布していても、受領者が GPL v3 を選択した瞬間に
自動特許ライセンスが発生する可能性がある。
これは開発者にとって予測不能で、特許権の管理が困難になる。
4-2. “v3 の特許条項が後から勝手に適用される” というリスク
GPL v2 の配布であっても、利用者が v3 を選んだ時点で
あなたの特許が自動開放されたような形になる。
これは特許の排他性と根本的に矛盾する。
5. GPL v2 固定を選ぶと特許戦略はどう確立できるか5-1. 特許の排他権を保持したまま OSS 配布が可能
GPL v2 は特許を開放しないため、
- 基本特許は保持
- 商用向けに別ライセンス
- 競合が特許侵害している場合の警告や交渉
など、OSS と特許ビジネスを両立できる。
5-2. 無料版(GPL)と有料版(商用)の切り分けが容易
GPL v2 は特許に触れないため、
- 無料版は GPL v2
- 有料版は企業向け商用ライセンス(特許利用を含む)
という「デュアルライセンス」が自然に構築できる。
5-3. 競合が GPL の範囲内で利用する場合の特許行使例
想定シナリオ
- 競合Aが、あなたの GPL v2 コードを利用して独自機能を追加
- 追加部分があなたの特許を実施
- GPL は著作権ライセンスに過ぎないため、特許侵害の判断とは無関係
結論
競合が GPL を遵守していても、
特許侵害部分については通常どおり警告・交渉できる。
これが GPL v2 固定が特許戦略に適している最大の理由である。
6. まとめ:特許を活用するなら GPL v2 固定一択
| 項目 | GPL v2 | GPL v3 |
|---|---|---|
| 特許自動ライセンス | なし | あり |
| 特許行使の自由 | 高い | 制限強い |
| 特許ビジネスとの両立 | 容易 | 困難 |
| or laterによる影響 | v2に固定可能 | v3の条項が適用され得る |
特許権を保持したい開発者は、GPL v2 固定以外の選択肢を事実上取りづらい。
特に
- WordPress テーマ/プラグインの開発者
- 特許を既に取得済み
- 将来的に商用ライセンスを並行したい
という場合、GPL v2 固定は最も合理的な選択となる。
7. 参考情報
1. GPL v2 本文(FSF公式原文)
■ GNU General Public License Version 2.0
一次情報:Free Software Foundation (FSF) 公式配布
URL(一次原典):
https://www.gnu.org/licenses/old-licenses/gpl-2.0.txt
重要条文
- Section 0(定義)
- Section 2(複製・改変条件)
- Section 7(特許条件との衝突:This section makes clear what happens if you have a patent license that conflicts with the GPL)
Section 7 は「特許行使を禁止する条文」ではなく、
“GPL と矛盾する特許条件を課す者は配布してはならない”
という仕組みであることが原典で確認できる。
2. GPL v3 本文(FSF公式原文)
■ GNU General Public License Version 3.0
一次情報:
https://www.gnu.org/licenses/gpl-3.0.txt
重要条文
- Section 11(Patents)
“each contributor grants an express patent license … for any of their patent claims that would be infringed by making, using, or selling the contributor’s version”
→ GPL v3 の「自動特許ライセンス」条文そのもの。
3. FSF公式「GPLv2 の特許に関する立場の説明」
■ Frequently Asked Questions about the GNU GPL
一次情報:
https://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.html
該当箇所:
- “Does the GPLv2 have an implicit patent license?”
→ “The GPLv2 does not contain an explicit patent license.” - “What does GPLv2 section 7 mean?”
→ 特許条項との矛盾時、配布不可となることを明確化。
4. FSF公式「GPLv3 の特許条項の狙い」
■ Rationale for GPLv3 – Part 3: Patents
一次情報:
https://www.gnu.org/licenses/rationale
FSF が v3 で特許条項を明文化した理由を説明する一次資料。
該当ポイント:
- GPLv2 は特許ライセンスに“不確かさ”がある
- v3 で明示的特許ライセンスを導入した経緯
- Microsoft–Novell Agreement への対処として特許条項を強化
5. Linux カーネルプロジェクトによる GPL v2 特許解釈(一次資料)
■ “GPLv2 and Patents” — Linux Foundation
一次情報:
https://www.linuxfoundation.org/blog/blog/gplv2-and-patents/
要点(原典より)
- GPLv2 は特許ライセンスを含むとは言えない
- Section 7 は矛盾を排除するための「条件の整合性条項」
Linux Kernel が GPL2-only を維持する根拠としても引用される。
6. FSF公式:GPLv2 → GPLv3 の「or later」の意味
■ How to use GNU licenses for your own software
一次情報:
https://www.gnu.org/licenses/gpl-howto.html
該当箇所:
- “Version 2, or (at your option) any later version”
→ 利用者が v3 を選べる仕組みを明記
7. 特許権の性質(排他権)の原典(法律)
日本法(一次資料)
- 特許法 第68条(専用実施権)/第100条(差止請求)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121
■ 記事の主張ごとに対応する一次情報マッピング
| 記事内容 | 一次情報 |
|---|---|
| GPL v2 は特許ライセンスを自動付与しない | GPLv2 原文(Section 7)、FSF FAQ |
| GPL v2 は特許開放義務を課さない | GPLv2 原文、FSF FAQ |
| GPL v3 は明示的特許ライセンスを自動付与 | GPLv3 Section 11 |
| GPL v3 は特許行使を制限する仕組みがある | GPLv3 Section 11、FSF Rationale |
| “GPL v2 or later” は利用者が v3 を選べる | FSF “How to use GNU licenses” |
| v3 を選ばれると自動特許ライセンスが発生 | GPLv3 Section 11 |
| GPL v2 固定なら特許戦略と両立しやすい | 上記 FSF FAQ、Linux Foundation 解説 |
| 競合がGPL遵守でも特許侵害部分は別問題 | 特許法(日本法68条/100条、米法35 USC) |
